一緒に「みち」を育ててみない!? 花みちプロジェクト

2022.05.20

宮崎市の中心地を突っ切るメインストリート、高千穂通り。
この2年ほど、通りを歩くたびにある変化に気づきます。車道と歩道のあいだに設けられたいくつもの花壇。その様子がこれまでと異なり、ふっと目を引く。春夏秋冬、季節の移ろいに合わせ草花の雰囲気が変化していく姿に風情を感じ、思わず見入ってしまう。変わりゆく高千穂通りを「花」の視点から見ていくとおもしろい発見があります。

現在、この高千穂通りの植栽を行っているのは「花みちプロジェクト」。このプロジェクトは花の魅力により居心地良く歩きたくなる「みち」をプロデュースする取り組みで、2020年秋に活動がスタートしました。毎月2回、第2・4日曜日にプロジェクトメンバーとボランティアの手によって花壇の手入れがされています。

花の芽吹きから開花、枯れていく姿までを時間の経過に沿って楽しむ

実施しているのは一般財団法人日本造園修景協会 宮崎県支部に設置された「花みちプロジェクト部会」。

花みちプロジェクトのはじまるきっかけは2019年のこと。この年の5月、国土交通省ガーデンツーリズム制度に宮崎市の「宮崎花旅365」が登録されました。市内の庭園が連携して魅力向上を目指すこの事業では、組織の枠を超えたガーデナーたちによる勉強会が発足。先駆的事例として綾町で行われていた「ナチュラリスティックな植栽」に触発され、街中という都市空間と自然が調和した風景づくりに挑んでいます。

花みちプロジェクトが指針にしているナチュラリスティックという思想は、自然の風景から着想を得たもの。
自然は季節やその気候に応じてさまざまな表情を見せてくれます。多様な植物が共存し、咲いている花もあれば枯れた植物の姿もある。そんな自然の姿からひらめきを得た植栽方法を用い、一年草と多年草、そして宮崎の里山で見られる植物を組み合わせることで、花の芽吹きから開花、枯れていく姿までを時間の経過に沿って楽しむことができます。

高千穂通りにある89箇所の花壇には約120品種、本数にして約25,000本もの草花が植えてあります。その中にはラナンキュラスラックスをはじめ宮崎ブランドの草花もあり、120品種中のおよそ80品種は宮崎の気候に適した植物かどうか知るために試験的な植栽が行われています。

それぞれの花壇を注意深く見ると、ガーデナーの技術が至るところに表れていました。
たとえば、大通りの北側と南側とでは、日の当たり方や建物の位置も異なるため、草花の成長の仕方も異なります。その点が考慮され、日陰になりやすい場所ではホワイトやブルーといった明るい花を植え、反対に日がずっと当たる場所にはレッドやオレンジなど色鮮やかな花を植える。また、花壇の中にある草花の高さや、花が咲いて枯れていくタイミングも調整されています。配色や位置関係、季節に至るまで総合的に草花の魅力が発揮される見せ方がされています。

プロジェクトメンバーの一人である植木りかさんはこんなことを言っていました。

「日本の良さって四季を感じられることだと思います。花が揺れている姿やきらきら光っている姿は五感を刺激してくれる。車が通ったあとに麦が揺れているっていうのも、なんだかいいですよね。草花を通じて風が見えるって好きなんですよ」

道路や建物といった構造物に草花が加わることで、
見えない街中の魅力に気づいていく。

毎月2回行われている植栽ボランティアには、花みちプロジェクトの中心メンバーに加え、一般の人々も多数参加しています。花が好きな人、ガーデナーの技を学びに来る人などその目的はさまざま。活動がはじまって以来、かつては花壇に放置されていたゴミが減少するといった景観の変化も見られるように。活動も少しずつ認知され、道行く人から「この花は何?」と話しかけられることも増えました。高千穂通りの姿が花みちプロジェクトに参加する人々によって少しずつ変化していく。

「私自身変わったなと思うのは、プロジェクトに参加してから街全体を眺めるようになりましたね。いつの間にか今いる場所だけじゃなく、車道を挟んだ反対側の花壇も見るように。そうやって視線が動くと、草花だけではなくて楠並木も独特な伸び方をしているなって、通りの魅力に気づいていくんです」と植木さん。

変わっていく街中。変わっていく高千穂通り。
あなたが高千穂通りを歩くとき、ふと花壇に目をやったとき、草花たちはどんな表情をしていますか。